神戸ではたらく中年エンジニアのブログ

震災後に神戸で働きだしたジジイです。DBシステム、プログラムに機械装置、なんでも作ります。

2005-01-01から1年間の記事一覧

「受け月」伊集院静

とてもやわらかい文体で綴られる、野球をモチーフにとった短篇集です。 1話目がとてもよくて、久しぶりに読みながら泣いてしまいました。電車のなかで。 受け月に祈る、人間のはかなさがとてもいいです。 スポーツに関わると、人間はとても素直になれるとき…

「漂流」吉村昭

「圧倒的」という表現が、ぴったりの小説です。ドキュメンタリーと銘打ってありますが、江戸時代・天命年間の記録を題材にとったもので、作者の特徴でもある登場人物の心理状態の描写がとても秀逸です。 時化に遭い、時間を追って崩壊していく船。結局は難破…

「リプレイ」ケン・グリムウッド

中年男がある日突然死をして、その記憶を持ったまま、25年前に戻ってしまう、というSFです。「もしも人生をやりなおせたら」というのは、SFでは古臭いテーマです。 男は競馬とかメジャーリーグの結果を知っているので、ギャンブルで大儲けします。そのお金…

「蒲生邸事件」宮部みゆき

前回、ワープロの使い方を覚えた作者が、今度もがんばって使って書いた作品です。しかも本格SFに挑戦だ!今度はきっと、用語登録とか、その辺のテクニックも使えるようになったのでしょう。長い長い。文庫で680ページもの、駄文。 内容は、タイムスリッ…

「ラッキーマン」マイケル・J・フォックス

いつも明るく、ひょうきんで人を笑わせるのが大好きで、でも涙もろくて、かわいい女の子にはいちころだ。なんて魅力のあるキャラクター。彼の名前を聞くと、すぐにそれを連想します。彼の映画も、テレビも、なんだかんだいって見てました。いい俳優ですよね…

「The S.O.U.P」川端裕人

「ソープ」でなくて、「スープ」です。 なかなか読み応えのある、ハッカー小説です。けっこう楽しんで読めます。 国際的に活躍するハッカーに、ある日訪ねてきた、経済産業省の役人と名乗る女。その依頼を受け、「EGG」と名乗るクラッカー集団のクラッキ…

「青春デンデケデケデケ」芦原すなお

青春小説、というとなんだかいい年こいて読むのもどうかと思いますが、友達、音楽、バイトに恋、高校生の明るく切ない時代。あの輝きはー、もう戻らないのねー(なんの歌や)。 高校時代を書いたちょっといい小説で有名なところでは、村上龍の「69」があり…

「Twelve Y.O.」福井晴敏

非常に力のある小説です。 街行く適当な若者に声をかける、自衛隊の手配師。その仕事をなんの情熱もなく漫然と続ける男。こんなはずじゃない、と自分の生き様を悔やみながらも、なにひとつ変えることのできない、怠惰な日々。そんな男の前に、元上官である東…

「カノン」篠田節子

高村薫は別格として(なんでや)、女流作家でとても好きな人のひとりです。男も女も、作家では関係ないとは思うのですが、この人の辛らつな現実描写は、やはり女の人でなくちゃあ、できないのではー、て思います。とてもしっかりとした文章と、構成力のある…

「理由」宮部みゆき

小説でも音楽でも、ひとりの作家が傑作として世に残せる作品は、本当にまれです。それは奇跡的な出来事といってもいいでしょう。逆に、ひとつでも傑作をものすることができれば、それは作家にとってまさに冥利に尽きるいったところなのでしょう。 さて、「宮…

「将棋の子」大崎善生

「羽生名人」といえば、誰でも知っている、将棋の天才。高い年収、社会的地位、マスコミは飛びつき、女子アナなんかと結婚しちゃったり、きらびやかな世界。実際、棋士たちの奔放な生活ぶりは、なにかと有名ですね。 でもそれは、厳しい生存競争を勝ち抜き、…

「しあわせの理由」グレッグ・イーガン

ハードSFの旗手であるグレッグ・イーガンの短編集その2です。 とにかくすごい作家で、発表する作品ほとんどが、なんらかの賞をとる。内容も、非常に科学の最先端できわどいところを取り上げています。 得意とするテーマは、量子力学とアイデンティティ。現…

「胡蝶の夢」司馬遼太郎

読了して、本当に様々な、深い感慨にふけってしまいました。江戸時代末期から、日本の医学の黎明期、漢方しかなかった日本の医学に、オランダさらにドイツという、近代医学を持ち込むのに活躍した人々が主人公です。 幕府のおかかえ医師である松本良順。権力…

「奇跡の人」真保裕一

「ホワイトアウト」に「震源」「奪取」日本屈指のストーリーテラーでしょう。よく東野圭吾とならんで、ベストセラーのところにあるのですが、この2人の作品は、実際読んでまったくハズレがありませんね。 題名はヘレンケラーとかけているのだと思います。事…